虹を追う群像

NPC5月号組合長エッセイ

「朋有り、遠方より来る、また楽しからずや」論語の中にある孔子の有名な言葉です。「遠くから学問の仲間が訪ねてくるのは何とも楽しいことだ」と説いてます。

4月12日(水)「五馬媛の里」の満開の桜の下、吉田一生大分県副知事さんをはじめ、日頃よりお世話になりご厚情をいただいてますお取引先様など、約三百名の方々をお招きして、感謝とお礼の「桜を愛でる小宴」を開きました。東は東京、京都、西は鹿児島からの来園でした。

この三年間は新型コロナウイルス感染を避けるため、止むを得ず開催を自粛してまいりましたが、このようなことでは人間関係が稀薄になってしまい、大山が大切にしてきた「血縁を越えた親戚関係」という深い繋がりが壊れてしまうのではないかと不安が募りました。これではいけないと、お取引先様ともご相談申し上げましたところ、皆さんから「是非やりましょう」との励ましの言葉が返ってきました。そして多くのお客様が遠方からもご来園をくださったのです。当日お客様には「農家もてなし料理・百のご馳走」と、五馬媛の里に自生してます竹林の孟宗竹を伐り倒して作った、大きな青竹徳利に清酒を二升入れて、焚火の中に放り込んで、燗をつけたお酒でおもてなしです。もちろん盃も青竹で沢山お客様の分を作りました。その盃に燗酒を注いで地酒を酌み交しながら、田舎料理に舌鼓を打ちます。燗酒は伐り倒したばかりの新鮮な青竹徳利の上燗です。青竹の竹汁が清酒と溶け合い、えも言われぬ絶妙な旨い酒となっています。皆さん一口呑んで「旨い、これは何という銘柄の清酒ですか?」と感動の言葉を発します。全国各地よりご来園の異業種の方々が、時の流れも忘れ満開の桜の下で交流を深め、楽しく愉快に歓談していただけたと思っています。先々月号「利他の心」、先月号「古典からの学び」の続きです。大山で暮らす人たちが誇れる農村の理想郷をつくるためには、何が求められているかを考えてみましょう。むずかしい課題でもあります。故治美名誉組合長は退任も近い頃、次のように語ってます。「ムラづくりは一握りの町村長であり、農協長であるものがどんなに頑張ってみても、自己の力で自己の目の黒いうちに、そう、たやすく出来上がる代物ではないことを、つくづく思い知らされている次第であります。町民の中には足腰の弱い人もいる。一人の脱落者もあってはならない。ムラづくりは優等生教育に堕してはならぬと心得ています。弱い者同志でも手を握り合って、歩一歩、辛抱強く前進をつづけなくてはならぬと思うのであります。富士山の頂上に向かって、一直線に登山する愚をつつしみ、広い裾野を横廻りにたどりながら無理をせず町民みんなとともに登っていく。この政策展開を円錐体循環上昇方式と自称しています。大山町は「虹を追う群像」の集合体であると言えそうです。子どもの頃、美しい虹を見て、これを捉えようと追っていたなつかしい思い出があります。ムラづくりは虹を追うにひとしい夢かもしれません。追えば追うほど虹は、山の彼方へ遠ざかっていく。手の届くものではありません。しかし望みを捨てずに追いつづける、この群像が、大山町の青壮年たちであり、若い女性像であります。力強く彼らを押し上げ、彼らのあとにつづきながら、見果てぬ夢を追いつづけるのが、私たちの努めでありましょう。」時代が経過しても常に心に留めておきたい言葉です。

93歳最高齢者のお菓子の菊家名誉会長ご夫妻のご来園