令和6年NPC12月号組合長エッセイ

豊穣の季節

「錦繍」それは金銀の糸や種々の鮮やかな美しい色糸や刺繍を用いて織り出された華麗な紋様の絹織物。そのような美しい絹織物に譬えられた日本の秋は「錦秋」と称賛され、悠久の昔より人々の心に自然の美しさと豊かさを与え受け継がれてきています。秋は澄んだ青空が高く広がり、美味しい食べ物が豊かに実る「豊穣の季節」でもあります。特に農村の秋ともなれば、田んぼには黄金色に実った稲穂が頭を垂れ、畑には古より私達が常食としてきた米・麦・粟・豆・黍などの五穀と称する穀物が、そして野山には柿や栗や梨・木通・茱萸・葡萄などの果実が撓わに実り色づき食べ頃を迎えています。正に美味しい作物が豊かに実る豊穣の季節です。暑くもなく、寒くもなく訪れる人、見る人、食べる人の心を豊かにしてくれるのがこの季節です。稔りの秋、行楽の秋、スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋、指を折ってみても秋はほんとうに多彩な季節でもあります。そんな中でよく耳にする言葉があります「天高く馬肥ゆる秋」です。皆さん大方の人がこの諺を次のように解釈されているのではないでしょうか。私も、秋になると気候も食べものも沢山あり高く澄んだ青空の下で、馬たちも御馳走を沢山食べて真ん丸と肥えて丈夫に逞しく育っていくものだと解釈してました。ところが意外にその解釈は間違ったものでした。昔(紀元前3世紀から後5世紀)の中国では秋の豊穣の季節になると「匈奴」と呼ばれていた遊牧の騎馬民族が大軍となって押し寄せて来て豊かに実った農産物を容赦なく略奪していったそうです。その略奪の被害があまりにも甚大であり、繰り返し続けられるため、中国はあの有名な「万里の長城」(東は河北省山海関から西は甘粛省嘉峪関に至る大城壁。長さ約2400km、高さ約6~9m、上部の幅4.5m。春秋戦国時代に斉・燕・趙・魏などの諸国が辺境を守るために築き、秦の始皇帝が大増築して、この名を称した。現在の長城は明代に築造。位置は遥かに南下に。)そうです万里の長城は匈奴という騎馬民族の侵入と略奪を防ぐために構築が始ったのです。つまり「天高く馬肥ゆる秋」とはすなわち、心して襲来の季節に備えなさいという「警戒警報」だったのです。現代では、その匈奴という民族はどうなったか解りません。モンゴル説とトルコ説などがあるようです。ところで今年の錦繍はすこし、おもむきが違ったようです。地球温暖化が進んだせいか各地で今夏、記録的な高温を記録する猛暑が続いた中、農産品の生産・出荷も減少したように、野山の紅葉も15日間ほど遅れ輝きも薄れているように感じられました。そんな11月29日(金)午後5時30分より農協本所二階ホールに生産者やお取引先様の(株)トキハインダストリー、TNC放送会館、イオン九州さんの社長他多数の幹部の皆さん、県西部振興局長、日田市長など行政機関など約200余名の出席をいただき、「木の花ガルテン創業35周年生産者交流会」を立食パーティー形式で賑やかに和気藹藹と開催することができました。年月の経つのは早いものです。平成2年7月7日の七夕様の夏の暑い日のオープンでした。これが事業として成功するのかと皆さん半信半疑でした。ところが事業は皆さんの予想に反して順風満帆とはいかないまでも、試行錯誤を繰返しながら、大分市や福岡市の都市の中に店舗を出店して、現在10店舗を構えています。これも生産者の方々のご協力の元、年間販売高も18億円となり多くのお客様の支持を得て、更なる発展へと夢を膨らませています。

交流会で賑やかに懇談と情報交換