令和6年組合長エッセイ8月号
平和に暮らすことを祈る
令和3年6~9月号までイスラエルのキブツ(集団農場)研修での体験を綴りました。1975年(昭50)今から49年も前のことです。そのイスラエルがテレビや新聞等で毎日のように報道されてます。キブツに滞在して研修したのは約3ヶ月間ほどでしたが、イスラエルと聞けば耳を欹てます。しかし報道内容は悲惨なものです。今回の発端は昨年、2023年10月7日にイスラエルに隣接する、パレスチナ自治区ガザをめぐる対立の中でイスラム組織ハマスがガザから5キロメートルほどにあるキブツ、ベイリという町を突然に襲撃し、100人以上が犠牲となり、30人が人質としてガザに連れ去られたことでした。この衝突から既に10ヶ月近くが過ぎ、双方に途方もない犠牲と損害を出しながらも出口は見えていません。それどころか中東の隣国や世界の大国も巻き込んで混迷の長いトンネルから脱け出せずにいます。更に心配なのがイスラエル北部のレバノンのイスラム教シーア派組織、イラン支援の武装集団ヒズボラとの戦いが続いており拡大する恐れがあります。さて4000年、5000年の難しい民族の歴史を持つ中東の問題は、私たちには深く語れません。お互いの崇拝する神の教えを悟り今を生きる人たちが、憎しみ怨み合うことを捨て去り平和に暮らすことを祈るばかりです。
3ヶ月間のキブツ研修での生活体験は、先のエッセイでも述べてますが、今回は「農業の6次産業化」について学んだことを綴ってみます。この言葉を最初に使い、それを理論化したのは故今村奈良臣東大名誉教授でした。今村先生は1993年(平5)に、条件に恵まれない山の中に元気のある小さな村があることを知り、その原因が何であるかを探るため大山の農家に泊り込み、大山農協の事業活動をつぶさに見ることにより発見したと語ってます。それは「生産の1次産業」×「加工の2次産業」×「流通販売の3次産業」を掛け合わせると「6次産業」となる事です。今村先生のこの言葉と理論は2010年(平22)3月12日、「6次産業化法案」として閣議決定されました。そして農林漁業の活性化と持続的発展に現在も寄与しているのです。この法案は私たち大山農協が実践してきた行動とその成果で生れたものです。「6次産業化」の言葉と理論は今村先生の創作ですが、その原点は大山の農業者が培ってきたものです。自信を持ちましょう。またその原典を遡ればイスラエルのキブツに辿り着きます。私たちが研修に出たころイスラエル内には320ほどのキブツがありました。ひとつのキブツが200~2000人ぐらいの人口で構成された組織です。農業中心であったり農業と工業を合わせ混在したキブツもあります。様々なキブツを視察した結果、農業を中心としたキブツよりも、農業と工業を合わせ持ったところの方が、より豊かな生活を営んでいることが見えてきました。何故豊かさがあるのか、調査していくうちにすこしずつ解ってきたのは、加工事業の方が収益率が高く、より多くの収益がプラスされていることでした。そして流通販売まで手を伸ばしているところは更に豊かな生活をしているのです。大山もこの方式を取り入れれば豊かになれると確信したのです。
次号につづく
今村奈良臣先生講演会(平成24年1月5日)