組合長エッセイ11月号
十五夜お月さま ひとりぼち 桜ふぶきの 花かげに 花嫁すがたの おねえさま くるまにゆられてゆきました
十五夜お月さま見てたでしょう 桜ふぶきの花かげに 花嫁すがたの おねえさまと お別れおしんで泣きました
十五夜お月さまひとりぼち 桜ふぶきの 花かげに 遠いお里のおねえさま わたしはひとりになりました
幼少の頃に歌わされてました。「花かげ」という童謡です。その当時は歌詩の意味も理解せずに皆と一緒に口遊んでいたものですが、年も経てそれ相応の年代になると、姉妹の愛や心情が映し出されて奥深いものが想像できます。詩も歌曲も人の心を揺り動かすやさしい力を持った童謡であると、この年齢になって気付かされます。この歌は「桜ふぶきの花かげに」が三番まで出てきますので桜の咲いている春の十五夜でしょう。「十五夜」とは旧暦の毎月の15日の夜のことです。特に秋の旧暦8月15日の十五夜は仲秋の名月と称されるように古来より日本人に慣れ親しまれた観月の行事です。何故に仲秋かというと秋の十五夜は(旧暦の7月、8月、9月)です。その最中に当たるのが8月なので仲秋と呼ばれてます。ちなみに今年の旧暦8月15日は9月29日(金)でした。天候もよくて美しい仲秋の満月を見ることができました。この満月の夜は、お月様に芋や秋の農作物を供えるので芋名月とも呼ばれてます。古来から観月には一番のよい時節とされ、月下に宴を張り、詩歌を朗詠されてました。農家など民間では月見団子・芋・栗・枝豆など竹の笊に盛り、御神酒を供え、芒や秋の草花を立て月を祭ってました。またよく聞きます「十三夜」は旧暦の毎月13日の夜のことです。8月15日の十五夜の月に対して「後の月」と呼び旧暦9月13日の夜の月を指します。今年の十三夜は10月27日(金)でした。この夜のお月様も天候に恵まれ美しく眺めることができました。先の芋名月に対して十三夜は豆名月・栗名月といって月見の行事が行なわれてきました。醍醐天皇の時代919年(延喜19)に月の宴が始ったともいわれてます。父君の宇多天皇がこの夜の月を無双(ならぶもののないこと)と賞したのによるものともいわれ、日本固有のものであります。私たちの子供の頃には近所のそれぞれの家庭が、十三夜・十五夜の秋の名月様に芋を蒸し、栗や枝豆を湯掻いて竹の笊に盛って鶏小舎の屋根上や、南瓜棚の上に供えてお月様を祭ってました。そうした供物を近所の子供たちが集って、それぞれの家々をまわって家の方に大きな声を出して「上げたかーいー」「引いたかーい」と聞きます。そして上げたと聞けば、子供たちは競り合って探しまわります。お菓子などない時代です。子供たちの楽しみのひとつでもありました。今はそんな風習も途絶えています。田舎の農村の古い習慣の中で育った子供の頃を懐かしく思い出します。
今年は平成3年に始った4年に1度の「梅干の祭典・第9回全国梅干コンクール」開催の年でした。今回も素晴らしい審査委員の先生方にご来場いただき、全国47都道府県より最多出品1,618点の審査会も「秋の十三夜」の日に無事終わりました。
次号へつづく
仲秋の名月