農村が滅ぶとき、国は滅ぶ
ウクライナという国は、東ヨーロッパ平原の南西部を占める共和国(政治社会が構成員全体のものであり、その共同利益のために存在する国家)です。東はロシア、北西はポーランド、南西はルーマニア、南は黒海・アゾブ海に接する位置にあります。小麦をはじめとする穀物類の大産地でもあります。そのウクライナに2月24日、ロシアが国際秩序を踏みにじり圧倒的な武力で軍事侵攻という暴挙に出ました。そしてロシアのプーチン大統領は常軌を逸した核兵器の使用まで示唆し「核」の威嚇まで連発しています。しかも双方の政府代表団による停戦交渉中にもかかわらず、ミサイルによる攻撃を繰り返し、子供をはじめ民間人多数が犠牲となっています。更に増えることが心配です。ほんとうに心が痛みます。一日も早く停戦が合意され以前にも増した平穏な生活と社会に戻ることを祈るばかりです。
私たち大山の農民は「農村は民族の母であると共に宝の山」であると信じて、いつの時代も常に理想郷を求め歩いてきました。これからもそうでしょう。日々の暮らしの中に夢や希望があり続けることが大切です。もっと欲を言えば、親子三世代がひとつ屋根の下で仲良く豊かに笑いが絶えずに生活することができれば最高の贅沢といえるでしょう。そのためには地域自らが個性ある豊かさと繁栄への道を常に探し求めていかなければなりません。更にはその土地で生きる人たちが誇れる暮らしの豊かさを創造していくことが望まれます。私たちの住む農村には本当の豊かさが眠っています。それに気付き、その宝の山を掘り起こしていくことが地域づくりの原点ではないでしょうか。この町に若者が残り、また一度出た者も帰ってきて、農業・農村を引き継いで次の時代に繋いでいかなければなりません。よく「知恵を出せ、知恵を出せ」と言います。農業でも商工業でも、どんな職種でもこの言葉が聞かれます。しかし知恵というものは何も無いところからは出てきません。知恵はその人の積み重ねられた体験や知識の中からでしか生れてこないでしょう。けれどもその知恵を出すことが大切です。出されたその知恵が利益を生み、繁栄と豊かさを育てていきます。「農村が滅ぶとき、国は滅ぶ」という格言・箴言(深い経験を踏まえ、簡潔に表現したいましめの言葉)があります。作家の有吉佐和子さんは、常に先を見通し鋭い執筆で社会問題に警鐘を鳴らしてきました。他界されて37年になりますが、当時すでにいま社会問題となっています「認知症」や「高齢化問題」を取り上げた『恍惚の人』「環境汚染」と「農業問題」を深く掘り下げた『複合汚染』などの著者としても高い評価を得た作家でもありました。その有吉佐和子さんが次のように語っているのを聞いたことがあります。「農業者や農協が力を合わせ頑張っているから日本はまだ滅びないのです」「農協があったからこそ、日本の農業はともかく守られてきたのです」今、私達は有吉佐和子さんの思いをあらためて強く胸に刻むと共に大山の新たな一歩を踏み出すべきでしょう。そしてウクライナの人々も、夢や希望に向かって進み繁栄と幸福が訪れるよう遠く離れた地方からですが一緒に祈りましょう。